花鳥風月記

流れる水に文字を書く

イントゥ・ザ・ワイルド

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原題は「荒野へ」。
アメリカのごく普通な家庭で育ち、大学を優秀な成績で卒業、
前途洋々と思われた青年が、生い立ちを憎み続けたあげく、
突如失踪する。

「世間」という重苦しい世界から解放されたい、という思いは、
各地を流浪した後、大自然の厳しさが聳え立つアラスカへ向わせる。

「良い子」でいることが苦痛であったことは、時として病的な描写にも思えた。
しかし、厳しい自然の中で生きて行くことの「自由」と
「自由」が故に自然の法則・掟の厳しさに己の小ささを痛感する。

最後には家族や愛するものとの「分かち合い」に思いが達するが、
恐らく23年間生きてきた中で、
本来なら常にあるべき「無償の愛(アガペー)」を感じることができず
彷徨ったという印象に映った。

ヒッピーの成れの果て、というよりもそれがもう、固有の文化圏として
成り立っているようなコミュニティの中でも、人はつねに迷う。

主人公が得られたものと、その代償が、この作品を
ピン、とはりつめたものにしている。

昨日の「アキレスと亀」でも感じたが、人間の「狂気」の表現は難しい。
主人公がアラスカの大地で一人ぼっちになった時の寂莫感は
「狂気」に近かったのだろう。それを演じている試みはあったが、
なかなか難しい。

「狂気」ということでは、表現として記憶に強いのは、
学生時代に観た「時計仕掛けのオレンジ」。
何かそんなことを思い出しながら、会場を後にした。

ちなみにこの回には、某女優(3年B組の浅井雪乃)が観に来ていた。
意外と小さかったし、オーラは感じなかったが、貫禄はあった…。