花鳥風月記

流れる水に文字を書く

山崎ナオコーラ 『この世は二人組ではできあがらない』

イメージ 1

自伝小説に近い設定の小説。
過去に何度か同じような設定のものに触れ
正直、飽き気味だったが、
おそらく総括的な位置づけなのだろう。
それゆえ、観念的な記述が多く、その是非が割れるのだろう。

設定は、大学卒業から、小説家を目指す主人公と、
社会とは反目するわではないが、距離を置きつつも、
でも認めて欲しいという彼氏とのくっついて・はなれるまでを描いている。

その中で、主人公は、改めて、自分が束縛されるもの
家族、戸籍、結婚、恋人、会社など、
様々なものに嫌悪感をもちつつも、
新しい人のつながりを求めている。
それは、誰もが冷たくもなく、そして熱くもないけど
心地よい何かであるもの。
小説が世に認められ、「分籍」をすることから、
彼女のゴール=新しい「個」としてのスタートを切るということにある。

設定が、かなり身近なのだろうと思う。
実在なのか架空なのかの「仕分け」に疑問点は残るものの、
それはきっと、いつもの調子なのだろう、と。

観念的な流れも、時系列的で、
恋人の「紙川」の「さん」付けが無くなった部分(146ページ)
は、明確に吹っ切れ、
最後の方の思索は、きっとまとまらない様々な「渦巻き」が
文章でうねっていた。

ある意味、卒業文集のような感覚も覚えた。