花鳥風月記

流れる水に文字を書く

伊坂幸太郎 『夜の国のクーパー』

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400ページくらいあり、最初は少しずつだったが、
夏の読書の締めくくりとして、一気に読んだ。

書き下ろしの小説。

ある小さな国では、クーパーという杉の変種と戦う戦士が毎年選ばれ、
事を成し遂げると「透明」になるという伝説があった。
その小さな国に、鉄国という大国からの侵略を受け、
国王は銃で倒され、本格的な支配になるかどうか、というところで
伊坂独特の複雑な展開が繰り広げられる。

時代設定や地域設定が全くの架空で、
「オーデュボンの祈り」と設定が近いようだが、
「オーデュボンの祈り」の場所がどことなく昔の日本という感じだが、
今回は、どことなく、中世のヨーロッパのようなイメージがある。

登場人物も、なんか歴史上の人物を彷彿としたような感じ。
伊坂本人が、書きながら楽しんでいるような感じがある。

今回は、登場人物や動物のほとんどが「言葉を持つ」という設定。
時に通じたり、通じなかったりが上手くちりばめられている。

話の展開としては、鉄国の支配からの話がやや長く感じて、
それはそれとして、緊迫感があるものの、展開がスローだったかなあ、と。
ただ、文中になかで、「強いものに、弱いものがどう付き合うか」という空気を
ネコと鼠、自国と鉄国と、入れ子的に潜ませているところがなかなかだった。
そして、途中の展開がじっくりだった分、
最後は、あっという間の急展開だった。

登場人物の中で、特に冴えない、現代の公務員の活躍は、
ネタバレになるが、「ガリ○ー旅行記」のような印象を受けた。

じっくり読んで、最後を楽しむ、という書き下ろしの醍醐味が感じられた。