花鳥風月記

流れる水に文字を書く

日本国憲法百景・再び (69)

されない限り


22時頃の帰宅路。ふと空を見上げると、満月。
正確には、明日の(というか本日の)18日が十五夜となる。
先日の台風一過のせいか、空には雲一つなく、そして空気が澄んでいる。
やがてその澄みが、乾きとなり、秋も深まる。
遊歩道には、虫の音も響き、ひともまばらな道は、
少しばかり楽しい帰路となった。

月を見ながら帰っていると、その端々に街路灯が目に入ってくる。
眼を閉じると、なぜか街路灯の残影だけが、瞼の裏に残る。
光といっても、一点から照らされる、いや、照射される光源は、
眼に突き刺さるような痛みを感じる。
一方で、月は面を照らしているので、瞼の裏というよりも、
脳裡にそのやんわりとした面影が残る。

昔の人は、月を愛でたというが、
長い時間を経て届けられた、柔らかく優しい光を
無意識に愛おしい、と感じていたのかもしれない。

長い時間作り上げられたものと
短く一点を照射するものは
同じようでいて、違う。
前者は、時間にとらわれず、人を優しくし、
後者は、勝ち負けの世界に巻き込まれ、殺伐とする。

解釈改憲。目の前にあるものは何か。
照らすべきものを、心しながら、みつめよう。


第六十九条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、
      又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に
      衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。