花鳥風月記

流れる水に文字を書く

そして父になる

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新宿ピカデリーにて。
映画の日ということもあり、満席に近かった。

というよりも、この映画館の入りがとても良いのだろう。

昭和40年代に多発した「赤ちゃん取り違え事件」をモチーフに
現代における問題と重ねあわせて描いた映画。

6歳(小学校入学)を前に、二つの家庭に「取り違え」の事実が知らされる。
一流企業で働く父を持ち、レールが敷かれつつある人生を歩もうとしている子どもと、
北関東のさびれた家電屋で、日々の生活をギリギリで生きながらも、
温かく育てられる3人兄弟の長男との「交換」のプロセスが描かれる。

両親の葛藤。良心の葛藤。
その中には、主人公のエリートサラリーマンの
これまで過ごしてきた人生がクロスする。
何かから逃れて拒絶する。
それが、時として親と子の「愛情」にかかわる部分と
後々になって気づく。

ひたすら、何かの崩壊に恐れ、懊悩する主人公の夫婦と
あるがままを受け入れる夫婦が対照的に映し出される。
人間にとっての幸せは、物質的な豊かさなのか精神的なものなのか。
「取り違え」の背景にある構図もそれなりの意味が込められている。

全体的には、まとまった映画だなあ、というのが正直な感想。
「まとまった」という表記には、幾分の保留事項があり、
配役が極めて無難な線をいっている。福山とリリーの話題性は別として、
どこかのTVドラマで出てくる俳優陣のオンパレードとなった。
だから、ちょっと飽きっぽくなる。

確かに「良い映画」といえるが、どこかこう「話題先行」的なところが気になった。
封切を前に、何がしかの賞をとり、それが話題となってキャンペーンを張る、というのも
使い古されたメディアミックスの手法が、いい加減、食傷気味でもある。
偏に製作に絡んでいる、テレビ局が悪いのだな、と思った。

そんなにいつも、現場は「踊る」ことはありませんて…(笑)。