花鳥風月記

流れる水に文字を書く

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ヒューマントラストシネマ有楽町にて。

先日、久しぶりに買った「週刊金曜日」で
伊藤千尋さんのコラムの最終回を知った。
なんという巡り合わせ…。
その中でも紹介されていた映画だった。

2012年に作られたようだが、映像はどことなく古めかしい。
当時のビデオ画像と合わせてのことかもしれない。

チリのピノチェト政権下に行われた1988年の国民投票
16年の独裁政権を目論んだ、8年の折り返しの形だけの投票。
当然、政権与党の勝利を確信されながらも、
当時の17に分かれた野党のうち、16までがまとまり、
独裁政権に「SI(賛成)」でなく「NO」を突き付けよう、と
政府から許された深夜の一日15分、27日間のキャンペーンCMを
追った映画だった。

当然、そのCMですべてがかわったわけではない。
しかしながら、軍政下での抵抗運動は、単に「不屈」という側面だけでなく
だれもが求める歓喜(喜び)という、
強い心も、そうでない心にも引きつけるCMを作り上げ、
勝利に寄与した様子が描写されている。

相手が用意した、ほんのちょっとの隙間でも
考えて、考えて、そして動いた結果、勝つことができる。

勿論、広告という手法は、戦争を煽ることもできる、
いわば「両刃の剣」でもあるが、
少なくとも、「抵抗の手段」として
強(したた)かに、そしてしなやかに
活かすことができることを、この映画は語っている。