花鳥風月記

流れる水に文字を書く

日本国憲法百景・三たび 番外編 2018年社説を読む

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あっという間に一年が経つ。
ここ数年、このカテゴリの更新はこの社説比較のみ。
これじゃいけない!と今回は5月3日当日の更新にした。

昨年のこの時期までは「改憲(壊憲)」の威勢の良かった
安倍政権だったが、もり(森友)・かけ(加計)・スパ(スパコン)の疑惑、
安倍首相に口裏を合わせるような公文書改ざん
上記と同じく防衛省の日報隠蔽、そして幹部の国会議員への罵倒、
さらには財務省次官のセクハラ問題など、
疑惑噴出の一年となり、支持率は急降下、不支持が上回る。

さらには都議選での「こんな人」発言
国際政治を顧みない北朝鮮への「最大限の圧力」
先日行われた南北首脳会談そして米朝首脳会談以降の
朝鮮問題を扱う枠組みで「蚊帳の外」の扱いを受ける。

数年前まで「反知性」という言葉で世相が形容されていたが、
つまるところ「バカには任せておけない」というのが、
今の時代の空気となった。

そんなわけで、改憲をめぐる動きは低調になった。

朝日新聞はこの一年間の国会の浪費(答弁をまともにしない・疑惑隠しの解散)など
政府の国会に対する不作為を断罪し、
また世論調査で政府に求める政策で9つのうち、
改憲は最も低いことを喝破した。

毎日新聞はそれよりも時間軸を縦に伸ばし丁寧に書いている。
行政府(内閣)に対して立法府(国会)が弱体化していることを指摘する。

近年、政権寄りが際立つ読売新聞は、自民党改憲案、
特に9条2項をめぐる自衛隊との存在(合憲か違憲か)を
デジタル機器のリピート再生のように語っている。
都合の悪いものは見たくないようである。

東京新聞も時間軸を1948年まで伸ばし、
ウグイスとホトトギスの逸話を入れ、
平易な文章でありながら、
いつの間にかの軍国化に警鐘を鳴らしている。
やはり自民党案の改憲案に当初記載されていた
自衛隊は最小限度の実力組織」という文言の
「最小限度」が削除されていることを注目している。

日経は与野党の対立を脱却し、信頼醸成をしたのちに
憲法を議論すればいい、との立場をとる。
手近なものとしては国民投票法について、とのことだが、
選挙とは比べ物にならないくらい、その手法に制限がない、
というのが問題点でもある。そこを触れずに意見をのべるのは、
知らないうちに「働き方改革」をやっちまおうという
財界の下心とそうは変わらないような印象をもった。

産経新聞については、もはやどこの国の新聞であるか
まったく見当もつかない。
どうやったらここまで今の首相を持ち上げられるのか。
「灼熱の砂浜でも、ついてゆきます下駄の雪」という感じだった。
しかしこれ自体、「逆さ読み」をすれば、今の政権への問題点が
浮き彫りになるというのは何とも皮肉な話となる。

改憲論議は、安倍首相の私的な感情が前に出ていることが見透かされ、
その首相自身への厳しい見方で、一旦遠のいたように見える。
しかし、改憲への大きな転機は、意外にも野党が政権を取った時が
要注意なのかもしれない。
「自社さ」政権が誕生した時、日本社会党村山富市
自衛隊を「合憲」としたことが今でも思い出される。

強靭な護憲意識・感覚がもっと必要に思える。