花鳥風月記

流れる水に文字を書く

伝説になった英雄

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渋谷のユーロスペースにて、先日の『コマンダンテ』『低開発の記憶』に続いてのキューバ物。
夕方、渋谷に着き、時間があったので、少し歩く。Q-AXビルの近くには、先日の爆発事故のあった
松涛温泉がある。既に解体・撤去は決まっているが、まだ手付かずの状態。入り口には衝立があり、
警備員が立っていた。後ろに回り、ちょうど爆発があった前を過ぎると、同じく衝立があるが、
鉄骨はそのときのままになっている。テレビで何度もみた光景がそこにある。
近隣の住宅は窓が替えられたところは窓枠の新しさが際立っていた。ただ、隣2件ほどは
まだ足場が組まれたままだった。

なぜかこの映画とのつながりを感じてしまうことがある。
ひとつは、映画の冒頭のシーンで、ゲバラの遺骨探しで、地面に穴を掘っているところが、
温泉のボーリングとシンメトリーを感じたこと、
もう一つは、高度に発展した資本主義社会と社会主義を目指したなかでも、
何か冷淡な皮肉が見受けられることにあった。

映画は、いまでもカリスマ的な支持を受けるゲバラの39年の生涯を追ったドキュメンタリー。
アルゼンチンの裕福な階級に生まれ、学生のとき、バイクで中南米を旅し、医師の資格を取り、
また放浪し、カストロとの出会いの後に、キューバ革命の立役者となる。革命後もキューバ
発展に尽力するも、やがてコンゴに渡り、革命を目指すが挫折、つぎにボリビアに渡ったが、
そこでの闘いで力尽き、射殺される。このストーリーは多くの人が知っている。
ここでは、様々な関係者の証言をもとに、ゲバラの人間像に迫っていた。

理想家であったことが、現実主義者に疎まれることもあったと思う。
極端な理想は、周りのどんな立場の人間であれ、保身に走らせる原動力になってしまう。
恐らく、それが分かれば分かるほど、より理想主義を貫くようになったのではないか、とも思える。
キューバ革命では、恐らく、カストロは「国」を残し、ゲバラは「理想」を残したのだと思う。
きっとキューバを知らない世代もゲバラTシャツを良く着ているのを見かける。
理由は簡単で、とにかくカッコいいのだ。この映画でもそうだった。