花鳥風月記

流れる水に文字を書く

夕凪の街 桜の国

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渋谷のシアターNにて。確か、昔はここがユーロスペースだったような…。
狭い映画館ながらも、席は満席に近かった。直前に着いたので、一番前の席で観たが、
苦にはならなかった。

映画は「夕凪の街」と「桜の国」の二部構成で、
「夕凪の街」では、原爆から13年経った広島での、主人公の皆実の淡い恋と、
原爆症で奪われた命の物語を穏やかな流れの中で、切々と描いている。
「桜の国」では、皆実の弟の旭が定年退職後、広島の皆実のゆかりのある人々を
たずね歩く姿を娘の七波が追いかけ、親の世代と自分の「暗い記憶」に向き合う様を
描いている。メッセージが先行ということではなく、穏やかながらも、
決して忘れてはならない記憶を伝えようとしている。

原作は漫画で、映画を観た後、買って読んだ。
確か、一度話題になっていたことは知っていたが、特に「漫画」と思って読まなかった。
原作は決してページが多い訳ではなく、そして暗くもない。但し、出てくる一言一言が
重い、というのが印象的だった。じつは、この「一言(ワンフフレーズ)」が少し気になっていた。
この言葉はどこから来たのか。実際の人の言葉なら尚のこと重い。
ただ、映画でこのワンフレーズというのは、一番表現が難しかったのではないか?
イメージが固定化されやすい漫画の原作で、大胆な構成で作り上げた映画で、
それは良かったと思うが、漫画の「決めゼリフ」が必ずしも映画のそれとは当てはまらないことも
知った上での作り方だったと思う。逆に、この映画評で出てくるのが、漫画でのセリフに
拘泥されているような印象も持った。

作品自体の品位は高かったが、「○○新聞○○周年記念事業」とか「○○知事推奨」
というスクリーン一杯に出てきていた文字が、せっかくの映画の品位を落としている。
いいかげん、スポンサーや後援者たちの「オレオレ」というのは控えたらどうなのか…。