花鳥風月記

流れる水に文字を書く

織田裕二 『脱線者』

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この本は特に買おうと思って買った訳ではなかった。
そもそもは、先日の麻布十番に行った時、土産の浪花屋の鯛焼き
20分待ちだったため、近くをぶらついて入った本屋で見かけた。
プロフィールに12月13日生まれとあり、たまたまその日で、
何か縁があるかと思い購入。

内容は期待していなかったが、思わぬ感想を得た。

様々な紹介では、「一度は自殺も考えた」ということが、
センセーショナルに書かれていたが、実際は、オレ様ワールド全開本だった。
この広告は、ブラフに近いか…。

何よりも突っ込みどころ満載。例えば、
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  むしろ粗い設計のほうが触発されることも多いし、うまくいく場合
 が多い。こうしたらいいんじゃないか。こうしたらもっとうまくいくんじ
 ゃないか。そんなことを考えさせる、決して「一〇〇点」ではない設計図。
 それはつまり、「一二〇点」に化ける可能性のある「八〇点」の設計図で
 ある。
  おそらく、自分にとっての最高傑作は「八二点」ぐらいの設計図から生
 まれると思う。(88ページ)
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この「八二点」という中途半端な数字は何よ、何が「二点」違うのか
全く根拠が分からない。

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  医者が殺した、殺さないと、今日もニュースで報道されている。おそら
 く半永久的に解決できないのが人間の「植物状態」、延命治療の問題だと
 思う。
  それがもし変わる可能性があるとしたら、冷凍保存だろう。(94ページ)
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医学の範疇を超えた、素晴らしい断定。さらに続けて、

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  僕は、冷凍保存をめぐるストーリーに関して、ひとつのアイデアを持っ
 ている。だが、ここではまだ明かせない。実現すれば、これは社会派ラブ
 ストーリーとして、世の中に問題提起できる作品になると思う。
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明かさなくても、内容はバレバレ。もう手塚先生が書いているのでは?という具合。

書いてある内容はまるで、中学生が夢を語っているような、そんな錯覚に襲われる。
まあ、少年時代の気持ちを持ち続けていることで、ファンがいるのかもしれないが…。
「小粒なアントニオ猪木」という印象だった。

本人も「不惑」を迎えるに当たっての本かと思うが、1つ下の人間としては、
内容が薄っぺらすぎて、ある意味、面白すぎた。
今後もオレ様ワールド全開で頑張って欲しい。