花鳥風月記

流れる水に文字を書く

川上未映子 「乳と卵」

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文学界12月号所収。
金平茂紀氏が、「新しい小説家の誕生」と自身のブログにて、
悲痛な叫び?に近い宣伝をしていた。
ここ一週間、川上未映子にまみれて、ようやくその意味が分かった。

今回は構成がしっかりしている。物言わぬ姪の緑子、豊胸手術に夢中の姉の巻子。
緑子の「女」になることへの嫌悪感、それは主人公が感じている問題で、
最終的には、巻子にもその思いは通底している。

「ことば」が先走りがちな展開に、緑子の筆談は、その流れをやわらかくする。
女性の持つ「乳」「母性」「生理」「卵子」、その怨念が循環し、
擬態化された、カタストロフィとしての「卵」が物語を締めくくる。

どこか懐かしい時代の話のようであって、最近的で生々しい。
すごく魅力のある文章だと感じた。