花鳥風月記

流れる水に文字を書く

日本国憲法百景 (31)

地図に残る仕事

大成建設のCMで「地図に残る仕事」というものがある。
ずっと前にも同じキャッチフレーズでCMをしていた。
父親(あるいは旦那・彼氏)が誇らしげに「これは僕が作ったんだ」
ということをさりげなく(かつ大げさに)言う。
企業のイメージアップにはちょうど良いのかもしれない。
大きなビルや道路・橋になれば、それこそランドマークとなり、その地域の財産になる。
そんな「大きな仕事」をやり遂げた自分が、父親が、旦那が、彼氏が誇らしく思うだろう。

東京に国会議事堂がある。これは、誰でも知っている。
石造りの巨大な建造物は、歴史的に残る財産でもある。
しかし、その屋根の石組みに、強制連行された朝鮮人が働かされていたことを
知る人は多くはないだろう。
かつては、どの世界でも、人手ということで、弱い立場の人間が
工事現場に駆り出されていた。アフリカからは奴隷を、中国からは苦力(クーリー)を。

それは今でも変わらない。
都心の大きなビルも、地方からの出稼ぎは言うに及ばず、
最近では、「偽装請負」で、本来斡旋されるはずのない、人材派遣で、
不本意な労働を強いられる人もいる。
時代は変われども、構造的な格差や支配関係は昔のままかもしれない。

「地図に残る仕事」―その地図が語るべき歴史を私たちは知らなければならない。

第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。