花鳥風月記

流れる水に文字を書く

日本国憲法百景 (32)

「彼ら」と「私たち」

その目に見えない一本の境界線が、距離感を厳密に支配する。
近年、「私」や「私たち」を決める思いが、かなり強くなっている。
「私」を認める、「私たち」を求め認知すること、これに全てがかかっているような
脆弱な人間心理が、社会の一つの「つながり」となっている。

「彼ら」はどうか。気楽な対象でもあり、時には敵愾心を滋養する存在になる。
現代の、個々人の脆い「心の砦」において、この「彼ら」「私たち」は
私を守る峻険ともいえる。

いや、実は「私たち」の中にも、いくつかの「彼ら」が詰まっているのかもしれない。
そう考えると、「人付き合い」というものに、徒労感と脱力感を感じてしまうのは
至極自然と言えよう。

昔から、「腹を割る」や「心を開く」という「ことば」はある。
これも考えてみると、そういった「彼ら」「私たち」の区分方法だったのかもしれない。

その人と人のつながり方に、おカネも忍び込む。

第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。