花鳥風月記

流れる水に文字を書く

森村泰昌 『「美しい」ってなんだろう 美術のすすめ』

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理論社の「よりみちパン!セ」シリーズ。
先日の森村泰昌の「荒ぶる神々の黄昏/なにものかへのレクイエム・其の弐」を
見に行った際に購入。手に取ったそのページの紙質が印象的だった。
正直なところ、セルフ・ポートレイトという手法がどんなものか、理解が難しい。
見に行った時も、森村の作品が、面白いとキモイのはざまの妙が良い、
と感じるくらいだった。
この本を読んだ後には、「結構考えてやってるなあ」ということと、
「意外な苦労人なのかもしれない」という印象を持った。

筆者が、芸術について、分かりやすく(字も大きい!)説明している。
少し上の人には、違和感があるかもしれないが、個人的には面白かった。
本にもいろいろな仕掛けがあり、表紙の裏面をつかって、各美術作品の大きさを
意識してもらおうとする試みもあり、「本も作品の一つ」という気概を感じた。

森村泰昌のレクチャーが10回分ある。絵画や抽象的な現代アートの見方など、
参考になることが多いが、それよりも、受講生(この場合はHPに掲載した読者)との
Q&Aに参考になるべきことが多かった。これは、本人が、ある意味で話下手なところが
あるからかもしれない。

なかなかの苦労人では、と感じたのは、
本人が美について書いた「ざわめき」という詩(159ページ)を読んだ時だった。

対立する二項の間を渉猟する。そんな結実が、じつは「美」であったりする。