花鳥風月記

流れる水に文字を書く

ノーカントリー

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日比谷スカラ座にて。
新しくなった東京宝塚ビルに入っている。
久しぶりに大きなスクリーンで映画を観る。

アカデミー賞にも選ばれたコーエン兄弟作の映画。
ストーリーは、テキサスの荒涼とした地で、
麻薬売買のトラブルの現場跡で、
大金を手に入れたベトナム帰りの主人公が、
トミー・リー・ジョーンズ扮する保安官と、
組織に雇われながらもその雇い主を含め、とにかく殺戮を重ねる
狂信的な殺し屋に追われる展開。

アメリカ映画にありがちな、迫り来るエイリアンから最後は逃げ切る、
という平板なストーリーではなく、悲劇的な結末を予定調和的に迎える。

西部の荒れた大地・ベトナム戦争の影・人間にも課される弱肉強食が、
NO COUNTRY FOR OLD MEN(原題)という「掟」につながる。
しかしながら映画に出てくる三者は三様の「人間性」と「悲哀」も持つ。
主人公には、足がつく危険を冒してまで、水を届ける絶望的な優しさを、
保安官には、守るべき存在を守りきれず懊悩し、ついには職を辞す敗北感、
殺し屋には、運命にすがることで、ゴールのない殺戮を繰り返す因果を、
それぞれが「人間臭さ」というところを持ち、描写されていることが、
この映画が高く評価される所以だろう。

最後の終わり方に様々な見方もあるようだが、
この映画で繰り返された「死」と同じように、
突然プツッと切れるのも良いのではないか。