花鳥風月記

流れる水に文字を書く

山崎ナオコーラ 『論理と感性は相反しない』

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15編からなる短編小説集。
何となく作品ごとのつながりがあり、
妙な連関もあるという、いろいろな仕掛けのある
意欲的な書き下ろし小説。(若干習作的な感じもある)
読んでいてそのつながりも楽しめる。

言葉の面白さもあった。
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カトウ、スランプにおちいり、歌詞が書けなくなる。南紀白浜にひとり
旅。海岸であぐら。すると、砂粒と砂粒の間に、歌詞が隠れているのを
見つける。拾い上げる。五線譜の上にさらさらと砂を落とすと、歌詞に
変わった。(「架空のバンドバイオグラフィー」)
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短い句点は、臨場感をかきたてる。
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オレはバンドのなかでネギのような存在だ。
ぐつぐつ煮える鍋の具に、例えるならば、ボーカルのカトウは鮭、ギターのマツモ
トはじゃが芋、ドラムのイワモトは三つ葉、タンバリンのミヤタはマロニーそして
ベースのオレはネギに位置している。(「素直におごられよう」)
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結構、バンドのメンバーって自分の立ち位置を気にするんだよなあ。
マロニーいいなあ。ちなみにマロニーは自分の大好物。

恐らく自分の分身とも思える矢野マユミズなんかの生涯や、
あとがきなどを見ると、結構小市民チックなところもある。
それを魅力と思うのも良いとは思うが…。

最近、自分を卑下しながら、その自虐キャラで、
がっぽり稼ぐ人も多いしなあ、とも思う。

いずれにしても、野心のある人となり(作品)であることは
いうまでもない。