花鳥風月記

流れる水に文字を書く

前田司郎 『誰かが手を、握っているような気がしてならない』

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実験的な小説。

語り手が様々変わる。
神の声が聴こえるというナオを「困惑」という感情で取り巻く
姉のリオ、母のミナコ、父のタカシ。そしてなぜか表れる神。
それぞれが懊悩し、なぜかつながっている。

最初は、場面の展開がつかめずに内容がつかみづらいところも合ったが、
この「ゲーム」のルールを理解すると、案外、面白い。
展開をしっかりつかむと、何かのゲームをクリアしたかのような
変な満足感もある。

文章は極めてビジュアル的というか舞台装置的で、
まるで演劇での場面展開を彷彿とさせる。
前田司郎の描く相変わらずの、それぞれの思考世界が展開している。
今回は、さらに神という存在で、その思考世界に
「混線」と「融合」という新境地も描いている。極めて挑戦的。

最後は、夢現(ゆめうつつ)が重なり合うような感じだったが、
もう少し深くても良かった。

しかし、前田司郎は、面白い。