花鳥風月記

流れる水に文字を書く

日本国憲法百景 (51)

憲法記念日に思う

1991年から、毎年のように5月3日は、新聞各紙の社説を見る。
そもそものきっかけは、暉峻淑子(てるおかいつこ)先生の講演だった。
その時は、毎日新聞の社説を評価していたのを知り、読んで「なるほど」と思った。
良心的兵役拒否を例に出し、今の憲法を実体化させる
(社説では「強靭(じん)性を」と書いてあった)ことが重要だ、という内容だった。

その後、時は流れ、憲法については、いくつかのスタンスがある。
改憲:いうまでもなく、憲法を改変しようという流れ。
   新しくもあり、古くもある発想。必ず右傾化の危惧を叫ばれる。
   論調としては、産経・中日あたりがこの枠内。
護憲:憲法を守る。その守る姿勢の頑なさが、時に「固陋」と叩かれる。
   人間がもつ「防衛本能」は戦後数十年においては有効だったが、
   現在ではリアリティの薄い若者から疎まれることもある。
   論調としては、朝日新聞だが、最近は、若者にも迎合しようという
   流れもあり、昨年(2007年)は3日に社説を21本も出すという醜態を晒す。
論憲:憲法をとにかく議論しあう。勝ち負けを考える前に論じようという考え。
   現在、毎日新聞がこのスタンス。その先に何を見るのか分からないが、
   とにかく変な熱は冷ますべき、という所から出ているのだろう。
   1991年の護憲論調よりは後退している。
創憲:最近、やたらと政策提言をしたがる読売新聞の論調。
   「ワンマンマン」(わかるかな)の好き放題に何とか苦慮しながらやっている感じ。
   基本は改憲なのだが、「右」のイメージをカモフラージュさせながら、
   なおかつこれからの国際社会(ここでは米国追従社会)の一員としての
   アイデンティティを求めている。
活憲:現在の憲法を積極的に活かそう、という論調。
   1994年ごろに朝日新聞伊藤千尋氏が唱え出し、法政大学の五十嵐仁教授が、
   昨年書籍を刊行した。2人の政治スタンスは同じかどうか分からないが、
   満足に使いもしなかったものを変える、ということに違和感を感じ、
   憲法を積極的に活かして世界平和や社会の幸福を目指す考え方。
   1991年の毎日新聞の社説に一番近い考え方。

まあ、肩肘張らずに憲法を見ていこうのいうのが、この「百景」。
今年はどんな論調になっているのか。毎年関心は尽きない。