花鳥風月記

流れる水に文字を書く

1978年、冬。

イメージ 1

渋谷ユーロスペースにて。

文化大革命が終息した中国。
そこから市場経済への開放と、経済発展に向かう少し前の世界を描いている。
いわゆる青春映画と違うところは、淡い感情が、
中国の国家の「重さ」に圧されてしまっていることにある。

アジア映画(という大雑把な括りでいいのだろうか)特有の
抑揚を抑えた(アメリカ映画に毒された人には退屈な)風景が広がる。
兄弟の愛情と愛憎。北京から来た一人ぼっちの少女。
その一人一人が抱える「痛み」が、素朴な風景と生活で交差する。
それは得てして「単調さ」に全てが押しつぶされそうな危機感も表されている。

兄や弟が、その別世界に何を求め、得たか。
その長い物語のほんの「出だし」の一こまが、
思い出深い「物語」となったのだろう。

個人的には、もっと運命に翻弄された描写があるのかと思ったが、
何か意外な展開だった。
もっとも、文革後の中国という設定なので、「停滞」というのも
示したかったのかとも思った。