花鳥風月記

流れる水に文字を書く

伊坂幸太郎 『グラスホッパー』

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前回読んだ『アヒルと鴨のコインロッカー』とは対照的に
人が殺されていくシーンが、これでもか、というくらいに描写されている。

それもそのはず。鯨・蝉・槿(あさがお)の三人の殺し屋が登場し、
冴えない主人公の鈴木をめぐって、血で血を洗う展開になる。
かといって下品な血腥さが漂うわけではなく(その辺が設定の妙であるが)、
登場人物の心理描写に力が入って、読者を惹きつける。

今回は、シーンが最初は離れながらも同時的で、後半は、ほぼ時系列的に
登場人物が、物語を語り継いでいくようなかたちになった。

未来のレシピを予言する案山子も登場。いいですねえ。

それから帯のタイトルにも「死んでるみたいに生きたくない」とあったが、
自分はむしろ
「暮らしてるんじゃなくて、生きてるだけだから」(87ページ)の言葉のほうが
印象的だった。