花鳥風月記

流れる水に文字を書く

下道基行『戦争のかたち』

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以前、代官山で行われた「アトミック・サンシャイン」の展示の際購入。
日本全国(韓国済州島も行った)の戦争の遺構を訪ねあるいた写真集。
展示会の時には、鳥居に焦点が当てられていたが、今回は
トーチカ・砲台・掩体(えんたい)壕・兵器試験場といった
より戦争にリアルなものを扱っている。

しかしながら、時代による風化のなかで、言われなければ気づかない、
また、その存在自体が認識できていないものもあった。
公園の椅子が、動物園の檻が、ちょっとシャレた住宅が
戦争とつながっているとは想像できない。

しかしながら、そこに住まう人、周りにいるお年寄りには、
戦争のリアリティを持ち続けている。

北海道・十勝の海岸にトーチカを作った人は、こう話している。
…軍隊に入って連隊長が挨拶で「ただいまの戦争は、勝つか負けるか、
そんな生やさしいものではない。負けるか負けないかだ!」って言うんですよ。
勝ちはないってことです。もうその頃は玉砕玉砕で負けてばかりいたのにね。
(軍は)兵士の士気が下がっちゃうから、嘘ばかりついてました。
みんなやる気なくなっちゃうから。
…やる気のないひともいたよ。だからって止めるわけにもいかないし。
まぁ、戦争に反対すると豚箱行きだったしね。戦争はメチャクチャだったよ。
アメリカの戦車に爆薬持って肉薄攻撃する捨て身の訓練もあった。
使い捨てさぁ、兵隊なんて。

写真がよりくっきりと浮かんで見えた。