花鳥風月記

流れる水に文字を書く

アキレスと亀

イメージ 1

イメージ 2

銀座テアトルシネマにて。
秋雨のジメジメした天気もあって、蒸すが、時折肌寒い。
空調の配慮も大変かと思ったが、映画館に行くエレベーターが
まずもって臭かった。エアコンのカビのせいではないか…。

封切直後の月曜日なので、決して満席ではなかったが、結構詰め合う。
前方真ん中という位置にしたが、隣がものすごい悪臭を出していた。
夏や季節の変わり目には、衛生面での注意が必要!特に映画館では!
これはたまらん、と思い、さらに前方の誰もいない列に腰掛ける。

北野作品にあまり詳しくはない。
むしろ、おカネを払ってまともに観たのはこれが初めて。
欧米では評価されている、とのこと。
かつてマルセ太郎の映画評で、天才でありながら理解に苦しむ、といった文章があった。
その頃の映画は人がバンバン殺されていくバイオレンスモノだったが、
その後、作風がいろいろ変遷したらしい。

北野フリークではない視線で観た率直な印象は、
色彩の抑揚がかなりしっかりとした作品だと思った。

特に赤と黄色については、細心の注意がなされていたのではないか。
少年・青年時代の回想シーンは、どことなく昔のTVドラマで観たような
青っぽい画像だった。この辺はテレビ世代にそだった人間の郷愁を誘っている。
しかし、作品で用いられる赤と黄色に限っては、原色がはっきり出るような
どぎつさが際立った。そこが「物語」を言葉以上に演出していた。

ストーリーは、売れない画家とその妻の人生を追ったドラマだが、
恐らく、画家に潜まれる「狂気」が、外的な要因から段々と内面に侵食され、
その最後に、“アキレスが亀に追いつく”ということになるのだろう。
「狂気」の表現、というのが、北野作品に多いような印象を持つが、
そこが「北野武」と「ビートたけし」で葛藤しているような気がした。
欧米で評価され、日本でまだ「?」とおもわれるフシがあるのは、
この「狂気」の見方なのではないか、と思った。