花鳥風月記

流れる水に文字を書く

伊坂幸太郎 『モダンタイムス』

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『魔王』の続編で50年後の設定。

あるシステムのメンテナンスから、突然出てきた疑問により、
「検索」をかける。そしてその検索が呪いのように、各自に災難がふりかかる。
やがて、大きな力=権力との結びつきや、その権力=国家のシステムの大きさに
慄(おのの)き、そして生き抜くという設定でストーリーが展開される。
漫画雑誌「モーニング」で連載された56回を単行本にまとめた。

連載時の挿絵が入った特別版もあるようだが、通常版を購入。
挿絵を見たら、なんかイメージが小さくなりそうなので、やめた。
※小説の挿絵は大抵そうなると思う。過去、唯一の例外は、
『宇宙の戦士』(ロバート・A・ハインライン早川書房1977年3月刊)
くらいだろう。いわゆる“ロボットモノ”のはしりでもある。

一言で評価するなら、「偉大なる失敗作品」。これは良い意味でそう言いたい。
とにかく長く、今までの作品ともやや趣きが違うが、面白かったのは確かだ。
ナゾはナゾのままで、思い切って進んでいるのも、何か含みがありそうだ。

『魔王』から『モダンタイムス』までの50年間が決して詳しく書かれて
いるわけではない。その辺は、連載小説の限界とも思えるし、
時代設定が未来のため、無理のない仮想設定が、
結局は今の時代とそう変わらないというパラドックスにも陥っている。
勿論、作者がこのままで終わらせるとは思わない。
文庫化の際の加筆補正もきっと多くあるのではないか。

同時に、この続編が何回か進んで、最終的にライフワークのような形に結集するなら、
もっと評価されるべきだろう。

『モダンタイムス』はおそらくチャップリンの映画からだと思うが、
本文中には、確か出ていなかったような気がする。それ故のネーミングかもしれない。