花鳥風月記

流れる水に文字を書く

ウォーダンス

イメージ 1

東京都写真美術館にて。
12日の金曜日に公開が終了だったので、観に行く。

ウガンダ北部パトンゴの小学生たちが、全国で競う音楽大会に出場する。
その2週間を追ったドキュメンタリー作品。

この北部では、反政府軍との内戦が続いている。
理由もなく子どもを誘拐し、少年兵に仕立てて行く。
この映画に登場する3人の生徒も、その影を引きずりながら、
しかもその真実の殆どを語れないでいる。
しかしその端々から伝わるものは、観ている人々に
とても重いものを突きつける。

私とは何者か?子どもたちがアイデンティティに悩む姿もある。
貧しく支援物資に群がる群衆。「もらう」立場であること。
両親をなくした孤児。
北部に住む「裏切り者」
そんな自己を苛(さいな)む苦しさから這い出すかのように
音楽に歌に踊りに夢中になる。

手作りの楽器や衣装。一生懸命の笑顔。
貧しさのなかから一糸乱れぬハーモニーを作り出す。
そして、民族舞踊の部門で見事優勝する。
アチョリ族という、住む場所を追われた民族が
その誇りを取り戻した瞬間でもあった。

アイデンティティに苦しんだ少女は、こう話した。
「これで私は『全国音楽祭で優勝し、トロフィーをもらった女の子』になれる」
この感動は知性や論理を超える。

観終わった後、この言葉を思い出した。
「歌うことと笑うことを知る者は、いかなる困難にも挫けない」
(イグルーク・エスキモーの格言)