花鳥風月記

流れる水に文字を書く

筆致俳句 (20)

健脚を 威張るジジイに 席譲り


中高年の登山がブームだそうだ。
土曜日の出勤途中には、それとすぐ分かる出で立ちを目にする。
しかし、そこには奇妙な風景もある。

たまにバスに乗ると、あと1つで終点の駅、というところで乗り込んで来る。
距離にして200メートルあるかどうか。
これから何メートルの山に行くか分からないが、
(得てしてそれは過剰な重装備にも思えるのだが)
どうせなら歩いたほうがいい準備運動になるのではないか。

普段の生活の習性が抜けきらないのかもしれない。
時には、そのバス停には、バスに乗り遅れないように、
100メートル近く猛ダッシュして乗り込む人もいる。
明らかに歩いて行った方が、体力は使わないはずだが…。

心では非日常を、習性では日常という二律背反の存在だからこそ、
いわゆる「いたわり」は必要なのかもしれない。

現代は若者よりも、中高年の方が「夢見る世代」なのかもしれない。