花鳥風月記

流れる水に文字を書く

白井裕子 『森林の崩壊』

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国土の66%を占める森林。
しかし現代では、計画的な伐採もままならず、
人工的な植林が進み、天災に弱くなり、
また、外国の輸入材を安く入れることを認めることによって、
林業が荒廃し、かつ、建築基準法の策定が更なる木造家屋の消滅を促す。

環境問題の視点から、世界的には森林の伐採が注視されるなか、
日本の林業政策は、いわば「非常識」にあたるのだろう。
まさに、自らの足元を見ることに注意を喚起した内容になっている。
確かに、世界的な環境問題については、著名なルポの類があったが、
今回のこの内容は、今までに見たことがなかった。
その点からでも、日本のジャーナリズムが足元を見ない、
まさに役人仕事に近いものが多いというのが危惧される。

筆者は一研究者として、建築を学び、実地に赴き、丁寧に調べ上げている。
国内の具体的には何か、というところにはなかなか踏み込めないようだが、
それでも十二分に問題提起の書になっている。

しかし、日本の木がそんなに余っているとか、正確な統計値がない、
というのも、この時代には意外なことだった。