花鳥風月記

流れる水に文字を書く

山崎ナオコーラ 『男と点と線』

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短編小説集の良さは、ちょっとした発想を
さっと書き上げられる快感にあるのかもしれない。

小津のような老夫婦の静かな物語や、
卒業グラフィティのような青春もの、
神話にも寓話にも属さないファンタジー
青春と性のグローイング・アップのようなストーリー、
やけに枯れた、それでいて味のある渋い恋仲、
なんとなく引き寄せられるロード・ムービー

そんないくつもの物語を、
マレーシア
パリ
上海
品川
ニューヨーク
アルゼンチンの最南端

年齢もてんでばらばらで、決して熱くも接しもしない、
男と女との微妙な距離感を書き上げている。
その心の機微がなんとなしげに読み手の「ふうん…」という
妙な納得感につながってゆく。
つくづくも不思議だが、らしい短編集だった。

個人的には最終話の「物語の完結」が面白かった。