花鳥風月記

流れる水に文字を書く

日本国憲法百景・再び (4)

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権能…


新聞の力が衰えたと言われて久しい。
ある尊敬する著名なジャーナリストが
20年近く前から言っていた事で印象的だったのは、
新聞社が共同でキャンペーンを張れば、
自民党政権を追い込むことができた…とのことだった。

新聞は「第四権力」とも言われる。
世論に影響を及ぼし、社会を正しい道へと導くといった使命感もある。
「社会の木鐸」「社会の公器」とも言われる。

しかし、新聞が政治を、社会を動かせたのは、
1980年代の終わりにあったリクルート疑惑までだったろうか…。
それ以降はてんでダメになってしまった。

理由はいくつかあろう。しかし注目すべきは、日本の景気と連動していることだ。
当然、新聞にも広告があるから、それに左右されることもあるだろう。
しかし、それ以上に、多角化経営や新メディアにたいする設備投資が
どうも足枷(あしかせ)となっているような気がしてならない。

かつて杉山隆男の『メディアの興亡』を読んだとき、毎日新聞の歴史を知った。
昭和30年代までは、日本一を誇った会社が、多角経営でいかに傾き、
新会社設立(倒産に近い)に至ったか…。

おそらく、これは毎日に限らず、他の会社でも、「昔も今も」同じなのではないだろうか。
当時は、志のある毎日記者(社員)が、それでも新聞の質を守り、現在に至っている。
そういう困難と安月給に耐える毎日新聞は心情的には好きだ…。
(購読はしてないけど)

バブル崩壊後、新聞記者も育っていないのではないか、というのも危惧される。
いわゆる「スター記者」がいなくなった。
朝日新聞伊藤千尋さんも今年9月で定年。

なんか受験の「良い子」と政治家のような「二世(けっこう多い!)」で
新聞社の内側から腐ってしまったのではないだろうか。
今や時の政権に啖呵切って喧嘩できる人材もいないだろう。

むしろ内輪だけ盛り上がるようなことに終始している。
例えば、テレビ朝日の椿発言報道、NHKの番組改編問題など。
テレビ局は総務省の許認可権があるから、弱いメディアだが、
あのNHKの問題は、完全に朝日新聞は腰が引けてしまった。
H記者、北海道から再起を期待する。

その前に、中立報道の問題や、取材の録音問題など、
仕事する側が訳の分からないイシューで惑わされたことが遠因もあると思うが…。
まあ、便利になること=取材する力が向上する、ということにはならない、
ということが歴史的にも実証された感もある。

また、新聞も含め、ジャーナリズム自体も、最初はプロパガンダが始まりなので、
歴史的に見て、ジャーナリズムがもっとも有効に作用したのは、
日本ならば、1945年(戦後)から1990年くらいまで、
と将来の教科書には記載されるのだろう。(もう、良くならなければ…)

日本の政治以上に、新聞社の問題は結構根深いなあ、と思う。
もはや「第四権力」の力はなくなってしまったのだろうか…。
神保町から竹橋まで歩いたときに、毎日新聞の社屋にあった看板に目が行く。
ここでは、クルマ1台駐車するのに、月6万円する!
格差社会を記事にしながらも、その足元ではずいぶんとまあ…。
「社会の公器」って高いんだなあ、とため息をつく。


第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、
    国政に関する権能を有しない。
  2 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する
    行為を委任することができる。