花鳥風月記

流れる水に文字を書く

セバスチャン・サルガド写真展 「アフリカ」

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恵比寿の東京都写真美術館にて。
サバスチャン・サルガドの写真を意識したのは、
竹橋の国立近代美術館での展示からだった。
今回の「アフリカ」はそういった意味では、彼のライフワークを
初めて観ることになる。

ブラジルで生まれ、パリに渡り農業経済学の博士課程を修了、
ロンドンにあるコーヒー国際機構に就職し、その縁でアフリカへ。
いつしかそれが契機として、フォト・ジャーナリズムの世界に入り、
現在の名声を得ている。

写真は、モノクロで、黒い肌と白い歯や「三方眼」が実に映える。
手や顔に刻まれた皺、砂丘が引き起こす風紋、少年の大きすぎる瞳、
そして本来ならばふくよかである赤ん坊の尻肉の爛(ただれ)れ方。
その全てが、どこかしら神がかっている。

ルワンダの虐殺現場。一年が経ったその凄惨な光景には、
水差しの円形を模倣するように、似たような形が点在する。
それが人間の頭蓋骨であることは、すぐに分かった。
墓地に葬られる前の亡骸を見ると、
人間は一つの球と棒の集合体なのか、と今更ながらに思う。

勿論、恐ろしさや惨めさだけが、この写真の意図ではなく、
かの地の生命力、それはそこで営まれる生命の躍動、
シマウマの給水する姿や、立派な角を持つ牛、背筋をのけぞらせる女性、
一枚一枚が造形美と躍動感を有している。

サルガドの写真はじつに雄弁に語る。