花鳥風月記

流れる水に文字を書く

日本国憲法百景・再び (12)

不断の努力


夢野久作の「懐中時計」を思い出す。
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 懐中時計が箪笥の向う側へ落ちて一人でチクタクと動いておりました。
 鼠が見つけて笑いました。
「馬鹿だなあ。誰も見る者はないのに、何だって動いているんだえ」
「人の見ない時でも動いているから、いつ見られても役に立つのさ」
 と懐中時計は答えました。
「人の見ない時だけか、又は人が見ている時だけに働いているものはどちらも泥棒だよ」
 鼠は恥かしくなってコソコソと逃げて行きました。
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さて、私たちは鼠になるだろうか、懐中時計になるだろうか…。


第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、
     これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならない
     のであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。