花鳥風月記

流れる水に文字を書く

クロッシング

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銀座のシネパトスにて。
正直、この映画を観るかどうか躊躇していたが、
たまたま17時10分開始直前に、映画館の前を通りかかったので、
「運と縁」と思い、観てみることにした。

情報が少ないところを扱うものは、得てして偏りが出てきてしまう、
そんな危惧があった。手にしたパンフレットを見ても、
その舟にどんな人が乗ってきているのか、またそれを持ち上げる人々が
一体何者なのか、考え出すと先入観が走り出してしまう。

しかし、そんなものを超越して、やはりしっかりと観て評価すべきと思った。

人間が遭遇する最大限の悲劇は、「貧困」であり、「飢え」であることは間違いない。
人間はだれしも、その2つから自由になる権利を有している。
政治体制の云々よりも、目の前のその不幸をどうするか。
抗い難い宿命と、国家のエゴに翻弄される運命、そして失われて行く命。
この映画は極めて深いヒューマン・ドラマに思えた。

父親の後を追うように、息子も越境をする。
数奇な運命が、かれをモンゴルのゴビ砂漠で一人ぼっちにする。
その雄大で厳しい自然が織り成す光景は、
観光客が楽しむ風景とは全く違うであろう。
凛とし、殺伐とした光景は
いつか話した死後の世界を彷彿とさせたのではなかろうか。

残念なことに、きっと今もこういったことがあるのだろう。
それもすごく近い所で。