花鳥風月記

流れる水に文字を書く

悪人

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有楽町のTOHOシャンテ・シネにて。
第34回モントリオール世界映画祭のワールド・コンペティション部門で、
深津絵里が最優秀女優賞を獲得した、とのニュースがあった。

そうなると、ちょっと観る気が減退する、というか、
わんさか人が来るだろう、と思い、足が遠のいた。
評価された映画は封切りの寿命が長かったので、
ほとぼりが冷めて、ついでに夕方、
新橋で立ち飲みをした酔いも醒めてから、
この映画を観る。

けっこう間が空いてはいるものの、それでもそこそこの入りだった。

現代の希薄で孤独な人間関係に入り込むような形で現れた「出会い系サイト」
そこで知り合った人間と、その人間関係のアヤによって引き起こされた殺人。
その瞬間から、とてつもない現実・事実の奔流に家族が巻き込まれる。
マスコミに追い立てられる祖母。
犯人が分からず、足蹴にした男に恨みを抱く娘の父。
同じ「出会い系サイト」で知り合いながら、ピュアな感情を抱きつつ、
それでも「人殺し」という現実に追い立てられ、彷徨う女、光代(深津絵里)。
主人公の祐一(妻夫木聡)の人物像が錯綜する。
いわれのない非難から自分を守り・逃れるために最初の女の首を絞めた。
しでかしたことにおののき、安らぎを求めながらたどり着いた光代という存在。
気遣いながら、しかし罪悪感と、息苦しさに苛まれる逃亡生活。
最後の破滅の場面で、とった行動。
結果、どこからも救いがなく、そしてそれは当然のように「悪人」となってしまう。
大きく映し出された「悪人」に、小さな「悪人」が見えなくなってしまう。
そんなことも、暗に示しているが、この映画の唯一の救いは、
殺された娘の父が、足蹴にした男(岡田将生)に詰め寄って、
最後は、暴力を振るわなかったところか。

「悪人」としての様々な面相を孕みつつ、ぐいぐい引き寄せられる映画だった。