花鳥風月記

流れる水に文字を書く

ヘヴンズ ストーリー

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新宿のK’s cinemaにて。
以前、渋谷ユーロスペースで観ようかどうか考えてたら、いつの間にか終わってた。
平日15:30スタートながら、80席ある映画館は、満席。

この映画は、4時間38分という長尺なもの。途中の休憩がある。
愛のむきだし」(園子温監督)以来か…。
もっとも、瀬々敬久監督作品には、頭脳警察ドキュメンタリー映画があり、
それも3部作を一気に観た。

予期せぬ殺人によって、両親と姉を失ったサト。
すでに犯人は自殺し、復讐の矛先がなくなったとき、
同じ時期に妻と娘を殺されたトモキがTVで復讐を訴えていたことに
擬似的な復讐心を膨らませ、いつのまにか憧れを寄せる。
犯人のミツオは、少年法により、極刑を免れる。
「生まれてくる子に僕のことを覚えてほしい」
その言葉に、惹かれた恭子は、ミツオを養子として迎えた。
彼が出所し、社会の偏見に圧せられつつ、また若年アルツハイマー病が
進行し、少しずつ記憶と人格がなくなってくる恭子を介護しながら、
サトにより、つかの間の平和の中にいたトモキに復讐に火がつく。
「被害者が少しくらい幸せになっちゃいけないのかなあ」というトモキに
「だめです」というサトの気魄が重い。
最後には、だれが勝つ・負けるではなく、復讐ができた・できないでなく、
生と死の境目はあっけないものかもしれないこと、
そして、結局は生と死が連鎖してゆくということ、を
様々な登場人物や設定の重層的な関係で描き出している。

前衛的?な人形劇や、シャーマンのようなシーンもある。
難解ではないものの、時代設定の振幅の幅もある。
4時間38分は決して冗長ではなく、ストーリー自体は詰まっている。

忍成修吾が出ていたせいか、ふと岩井俊二リリィ・シュシュのすべて」を
思い出した。どことなく映像美の感じが似ている。
ただ、北関東(だったか)のだだっ広い空間を描いた「リリィ…」とは違って、
本作は、天に近づくような、マンションや団地が各シーンに写し出されている。
それはともすると、現代における「バベルの塔」とも思えるような、
人間のもつ果てのない希望と欲望を暗示しているかのようだった。

他の登場人物も、日常の中にいる非日常なような存在だった。
復讐代行業を営む警察官カイジマ。
幼いころの暴行が原因で、聴覚障害を持つ女タエ(のちのトモキの妻)
⇒この「菜葉菜」という女優さん、古田新太とすごく似ているので、
親子か何かでは、と思ったが、よくわからない…。
などなど、それぞれが複雑にストーリーに絡み合う。

終了後、監督と松江哲明氏のトークショーがあったが、
ま、ユルユルな感じだった…(笑)。