花鳥風月記

流れる水に文字を書く

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙

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新宿のバルト9にて。
公開後、日が経っているとはいえ、
80席の狭いところにせんでもなあ、と思う。
年配の方を中心に、観客はまだ多かった。

この映画は、自伝的なものではない。
おそらく、本人が存命中であることや、
その歴史的評価が定まらないこと、
そして、まだ歴史や記憶が「生々しい」からこそ
晩年の認知症に苦しむ姿を借景に
その過去を振り返る設定となっているのだろう。

英語で言うならば
「struggle(奮闘・あがき)」と「pity(あわれみ・同情)」が
あてはまるだろう。

国史上初の、女性宰相そして経済の立て直しと
フォークランド戦争の勝利。
「国家としての強さ」を取り戻したことで人気が高まる。
一方で、国有企業の民営化や福祉の削減が
貧富の拡大を生んだという負の側面もある。
最後には、「人頭税」の導入に失敗し、政権を後にしたのだが、
その「サッチャリズム」という手法は意図的に描かれていない。
前述のとおり「生々しい」からだ。

とはいえ、struggleにもpityにも偏らない
バランス感覚は、英国映画らしい気がする。
王室を扱う映画なんかでもそうだ。

映画としては、亡き夫の追憶と幻想・幻覚に苛まれる
一女性としての弱さと、「鉄の女」と呼ばれたその栄華が
対極的で、胸が熱くなる内容であった。

何年、いや何十年後かに、
改めてドキュメンタリータッチのリメイクを期待する。