花鳥風月記

流れる水に文字を書く

オロ

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渋谷のユーロスペースにて。
映画の日とあって、最初別の映画館へ行ったら満員だったので、
そのままこの映画を観た。
そのため、日本人の映画監督だったので、
邦画と思ったくらい、何の前知識がなかった。

主人公のオロは、6歳の頃、チベットからヒマラヤを越えて
インドに亡命、現在“チベット子ども村”という学校に寄宿している。

チベットは、歴史的な背景として中国の支配が存在する。
現地では、高僧の還俗や、チベット語の禁止など、文化面にも及ぶ。
そのため、チベット文化を守るために危険な逃避行をする人が後を絶たない。

この主人公のオロも、約半年かけて
(一時期ははぐれて、働いて糊口をしのぎながら)
インドに入った。

その歴史的な背景と、今の生活ぶりを追っているドキュメンタリー。
そこには、監督の岩佐寿弥チベットに対する思いが交差し、
チベットを描きつつも、それを取り巻く「まさざし」が心優しく描かれる。

前作の「モゥモ チェンガ」のロケ地に連れて行き、
チベット人うしの交流も実現させる。
オロとその老婆が重ねる手の皺と艶が対極的で、
それが、「継いで行くもの」というメッセージにもなっている。

現実の重苦しさと、映像の優しさが混ざり合う、
なんとも形容がしがたい、良い映画だった。