花鳥風月記

流れる水に文字を書く

愚短想(290) 『五体不満足』なレストラン

五体不満足』で有名な乙武君が(君とつけてしまうが…)
さる銀座のレストランで入店拒否されたそうだ。
店側の言葉によると、車椅子の入店については
予約の際、事前に車椅子である旨を伝えねばならない、とのこと。
(この予約が乙武君の名前であれば、その時点で分かろうものだが…)

そんな経緯が乙武君のツイッターにつぶやかれて、
いわゆる「大騒ぎ」となり、店主は謝罪のコメントを
ツイッターと店のHPに記載した。

ここに至って、その経緯を見た人たち(いわば野次馬)は
以下の批判をつぶやいた。
・入店拒否した店主のふるまい
・多数のフォロワーを抱えた乙武君のつぶやきで
一斉にその店が批判にさらされたこと

どちらも隠然とした「力」というものに対して
拒否反応、あるいは揶揄している感じがした。

ただし、今回の件は、何がしかの両成敗ということはなく、
明らかに人間社会としてのルール(掟)において
逸脱していることが問題なのだろう。
仮に乙武君でなくても、身体にハンデを抱えた人に対し
門前払いをすること自体が許されないと思う。

乙武君自身、『五体不満足』の中で、大学受験浪人の際、
予備校を探すときに、自身が通い続けることができるような
環境の予備校を探し、そこで頑張って大学に合格している。
その予備校は(今はないらしいが)、彼が入学したことで、
校舎に入りやすいようにスロープを拵えた、という逸話もある。

要するに「選ぶこと」「合わせること」の立場の
取り違えによるものが大きい、と考える。
恐らく、銀座のお店は「選ばれる」ために
客を「選んでしまった」
そのお店が何にたいして「選ばれる」を意識したのか。
2階まで階段をせっせと登れるような健脚が保障された客や、
車椅子のお客の入店に対し
眉をしかめるような客に選ばれたかったということなのだろうか。

もしかしたら、車椅子の客を入れて
十分なサービスができないことを気にしていたならば、
それこそその批判を受け入れなければならないだろう。

おそらく、評価の対象とは、
そんな中でも充分努力する「もてなし」の方が大きいと思う。

今回の件で、そのお店が何かを改めることができる
チャンスがあるだろうか…。
こういった風評の厳しいネット社会では
つぶやいた本人も、つぶやかれた店も
不本意な結果になることもあるのかもしれない。