花鳥風月記

流れる水に文字を書く

伊坂幸太郎 「ガソリン生活」

イメージ 1

朝日新聞に連載されていた新聞小説が書籍化された。
購入して読み終えるまで時間が経ってしまった。

望月家の四人の家族とその自家用車である
「緑色のデミオ」が主人公である。

非日常的な「ありえない世界」や「ありえない事件」が
絶妙なタイミングでつなぎ合わせる伊坂らしいストーリー。

夜の国のクーパー」で人間の言葉を解する猫が登場したが、
今回はクルマがそうであった。
ただ、今回は人間に言葉を伝えることができない。
(最後のシーンを除いては…)

猫にしろ、クルマにしろ、物語中にどうしようもない
「弱点」をさらけ出している。
ある種の「人格(ネコ格、クルマ格)」を与える際、
完全無比では不自然だろうから、という伊坂の観察眼とも思える。

新聞小説でなければ、もっと大きな場面展開もあり得たのかもしれない。
しかし、これはこれで、完結性というか小さな世界を十分に作り上げ、
そこに回遊する登場人物が描かれていて、楽しかった。