花鳥風月記

流れる水に文字を書く

野火

イメージ 1

渋谷のユーロスペースにて。
入っているビルのみならず、
界隈のお店も少しずつ変わってきている。
単館上映の映画館を続けるのはきっと大変なんだろうな、と…。

大岡昇平原作。塚本晋也監督・主演。
太平洋戦争時のフィリピン・レイテ島での敗走時に起きた
悲惨な出来事を書いた小説を映画化。
1959年に市川崑が一度作っている。

原作も前作も見たことはなかった。
ただ、今回の映像を見て思うのは、
限りなく「挑戦」し続けた作品である、と。

「やりすぎ」と言われかねない残酷なシーン。
ともすればスプラッタ物のようなありえない惨状が
戦争という狂気の世界で、現実味が迫ってくる。

だれもが70年前のことを見ているわけでも、
きっと知っているわけでもないだろう。
しかし、生と死が隣り合わせの、濃密な精神支配の人間関係が、
現代の日本にも起こりうることを想起させる。

簡単にはつなげたくはないが、
これからの日本が今後どうなっていくか、ということを
暗示しているかのような思いもした。

ストーリーの重さ以上に、表現の重さを感じた。
そのせいだろうか、監督が自ら主演をやるという
「真剣勝負」を感じ、観客は見事になで斬りされた感じがした。

その刃傷は、やけに冷たくも熱い。