花鳥風月記

流れる水に文字を書く

愚短想(347) 橋を渡る前

目の前に橋がある。
そこを渡ってはいけない、という心の警告と
渡った先に何があるのだろう、という誘惑。

起こりうることが容易に想像できつつも、
そして後悔することが分かっていても、
某かの理由を付けて渡ってみようとする。

それは、本当は弱いくせにあえて振りかざす蛮勇のようでいて、
ただひたすらに、大きな声と力に靡けばいいという無自覚と
他の人間と一緒だ、変わらないという安っぽい連帯感。

自分一人で行くには、怖くて寂しいから、
誰彼ともなく、道連れをする。
その相手も、結局は何も知らぬまま、ともに歩を進める。

引き返せると思って渡ったら、橋は見事に消えていた。
ため息と新たな隷属の時代が始まる。


           …最近の英国と日本の空気を思って。