花鳥風月記

流れる水に文字を書く

あん

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舞浜イクスピアリにて。
昨年公開された映画。河瀨直美監督作品。

河瀨作品には、割と経験の浅い十代女子が起用されるが、
今回の内田伽羅は、樹木希林の孫娘(つまりはモックンの娘)、とのこと。
実質上の初共演らしい。

主人公の千太郎(永瀬正敏)は、過去の事件で借金を背負い、
どら焼きやを細々を商い、くすぶった日々を過ごしていた。
一個120円のどら焼きやは、中高生の寄り道先として
格好の場所だった。そこに通うワカナ(内田伽羅)は
シングルマザーの母とそりが合わず、宿り木のように
どらやきやへ足を運んでいた。
桜が満開の頃、74歳の老婆、徳江(樹木希林)が現れる。
時給六百円を三百円でも良いから、とアルバイトを懇願する。
当初千太郎は、固辞するが、徳江の作った餡に魅了され、
雇うことにする。
美味くなった餡に店が繁盛する。
しかし、徳江はライ病(ハンセン病)を経験していて、
その風評が広がり、店は閑古鳥が鳴くようになった。

小さな幸せを無慈悲に吹き飛ばすような設定。
自然と語らい生きることの大切さが、
優生学的な政策によって、その存在すら残されない。

樹木希林の演技は、彼女のスワン・ソングのような
そんな儚さを感じた。

人間という存在を見つめ直すには
いい機会になりそうな映画だった。