花鳥風月記

流れる水に文字を書く

港町

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渋谷のシアターイメージフォーラムにて。
想田監督の観察映画。
前回の「牡蠣工場」と同じで、
岡山県牛窓で撮影。

今回は奥さんの提案を受け、
モノクロ映画として制作。
それにより、戦後・昭和といった
旧き良き時代への回顧と、
来るべき新しい時代へに
否応なしに突き進む、一抹の寂しさも感じた。

ストーリーを設定しているわけではないが、
なぜかドラマ性を感じる。
人々が昔ながらの生活を守り、
現代に翻弄させられていることこそ、
きっと物語になるのだろう。

漁師のワイちゃんの生活を追いながら、
魚の流通を垣間見て、
続けておしゃべりで世話焼きなクミさんの
パーソナルなストーリーに導かれる。
夕暮れも深まる中で、丘の上の病院へ連れていかれ、
身の上を話すシーンでは、何か異次元の世界に引きずり込まれたような
スリリングな感覚になった。

撮影自体は約6年前で、のちにクミさんは亡くなってしまったが、
ある時間を切り取った、その瞬間は永遠で、
そこに物語があり、そして「祈り」があったようにも思う。

寒さを紛らわすために常に手を擦り合わせた姿が
そんな気持ちにさせた。