花鳥風月記

流れる水に文字を書く

日本国憲法百景・三たび 番外編 2019年社説を読む

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同じ憲法記念日の社説であっても、新聞社による違いは常のこと、
しかし、時代によっても扱うテーマは変わってくるのだな、と実感。
また「5月3日だから」とか「5月3日だけ」という観点は
変わりつつあるようだ。

今年は朝日・毎日・読売・日経・産経・東京の6紙を比較。
テーマはAIや天皇制を扱った内容だった。

ネットやデジタルの興隆の影響からか、
朝日新聞もとうとうこの日は22ページ建てとなった…。
夕刊もリニューアルして記事がスカスカとなり、
意味不明な罫線を引いてその貧相を誤魔化している。
社説は字のポイントや行間を工夫して見やすくしているようだが、
一日2本から1本がメインになってしまったようだ。
恐らく様々な「リサーチ」から新聞社における
「論説」の重要度が低くなっているということと、
「論説」による(恣意的な部分もあるように思えるが)「炎上」を
避けようとしているのかもしれない。
世論調査も併記している。
改憲機運高まらず」72%、
9条「変えない方が良い」64%となっている。
大事な部分は学者・研究者に語らせるというのも目立ってきている。
そんな中での社説の前半部分はAIを扱ったものだ。
AI(やビッグデータ)が人間のプライバシーなどの人権を侵害しないか
経済的な側面から重宝することで、民主主義を脅かすのではないか、
いう問いかけ。
合わせて政権のひずみにも言及する。前年の森友・加計問題は
改竄によって、一向に解明の道筋はつかない。
それは、統計資料など国家の公的なデータまでも廃棄・隠蔽に至る。
自衛隊に対しての根拠不明な「被害者意識」を煽り立てる。
「一強」に過信して専横に走る政権に国会はどこまで歯止めをかけられるか。
社説以外にも、天皇制との関係で、日本国憲法
1条(象徴天皇制)と9条(戦争放棄)がセットになっているという
論があったのが特徴的だった。

毎日新聞は24ページ建て。
社説では国会の機能復権が書かれている。
政権は改憲について強引な言辞を流し続けた。
我が意を通すために生じた問題は様々なところで生じている。
また、自衛隊憲法(9条)明記の問題について、
日本の防衛政策は、憲法9条日米安保条約がセットになっていて、
感情論(自衛隊が認められていないから)は矮小化しすぎだと主張している。
反面、沖縄の基地問題は昔から変わらぬ矛盾を押し付けていることを指摘している。
また、政権の専横を許してしまっているのは、
国会の機能低下によるものとし、政権の監視を強化した
機能強化が必要を述べている。

読売新聞は28ページ建て。先行して値上げしていた。
社説は今までの論と大きく変更はなかった。
令和の世に変わったことを受け、平成の歴史の中で
湾岸戦争やデジタル化によって、70年以上経つ憲法
不磨の大典でいいのか、という問いかけがあった。
ドイツでは60回以上改憲している(いつも聞くなあ…)や、
野党が憲法審査会に出席しない等、その論は変わりはない。
それだけ改憲をめぐる動きは膠着化していると言えるだろう。

日経も28ページ建て。連休中は読み物系が多い。
社説では、日本国憲法は70年の間に国民にしっかりと根付いたものであり、
改憲ありき」「護憲ありき」ではなく、少し距離を置いて
柔軟に話し合う機会が必要では、と指摘している。
同性婚天皇制など、時代に即した課題もあり、党勢拡大のための
一方的な議論は受け入れがたい、とのこと。
その上で、「非常事態条項」「参議院見直し」なども議論に値する、と述べている。
中庸は時として為政者に掉さす存在になるとは思うが…。

産経は22ページ建て。頑張ったのだろう…。
主張(社説のようなもの)では、日本の平和を守ったのは
憲法9条ではなく、自衛隊日米安保条約という「主張」。
日本は平和な世界に住んでいないとし、中国との尖閣諸島の問題、
北朝鮮の核ミサイルの問題を指摘しつつも、
なぜかロシアの北方領土の問題は、一言も触れていない。
4島返還が2島返還に、そして「固有の領土」という記述すら
外交青書から消えたというのに、なんとも「ナイーブ」ではないか。
それこそ、「主張」にある「平和ボケ」ではないのか。
自衛隊に対する関心も教育の問題もある、との「主張」、
憲法9条の「戦力の不保持」を削除して、自衛隊を明記し、
やがては軍の保持を明記した条文に改憲を、と「主張」。
今夏の参院選では「改憲」を問え、と。
そうあってほしい。「争点隠しをして勝とう」ということをせずに。

東京新聞。24ページ建て。
天皇憲法」というシリーズの5回目(最終回)。
皇室行事と憲法の関係(政教分離)をまとめていた。
国事行為としての「即位の礼
皇室行事としての「大嘗祭
しかし、大嘗祭にも国費が使われていたようだ。
また、男系と女系の問題、女性天皇の問題、
そして人権問題など、国民が関心をもちそうな内容を取り上げていた。
「象徴」という立場と、日本国内で人権に制約のある天皇・皇族に
今後どういった課題があるか、外国の皇室を比較して
考えるべきだろう、と論じている。
確かにこのままだと、いつかは後継者がいなくなることも考えられるだろう。

やはり大事なことは、関心を持ち続けることなのだろう…。