花鳥風月記

流れる水に文字を書く

『深呼吸の必要』

イメージ 1

シネマアートン下北沢の「沖縄クロニクル」最終日。
残念ながら、「ホテル・ハイビスカス」は観られなかったが、
また観る機会はあるだろう。
1本目は『深呼吸の必要』。
沖縄・宮古島での35日間のさとうきび刈りを通した青春群像。
主演の香里奈は『しゃべれどもしゃべれども』で先日観たが、
3年前のこの作品では、まだモデル然とした印象だった。
配役は、その後、活躍していった俳優の名前が多く連ねるが、
映画自体は、だんだんとさとうきびが刈られていくところど同時並行で
撮影が進んだらしい。だから、画面を通してみても、撮影やストーリーの
一体感のようなものが感じられた。
また、タイトルの意味は、主人公が、小児外科医の男性に語ったことからきている
……………………………………………………………………………………………………
水泳のレースがあって、緊張して眠れなかったときに、お父さんに
「飛び込む前に一回深呼吸をしてみろ」といわれたの
私は「そうしたら速く泳げるようになるの?」と聞いたら
「いや、速く泳ぐことはできない。でもその代わり楽しくなるんだ」といわれた。
                          (細かい台詞はうろ覚え)
……………………………………………………………………………………………………
上記は映画の冒頭のシーンだったのだが、恐らく現代社会に疲れてきた若者に
深呼吸を与える環境が、このさとうきび刈りの場所だったのだろう。

さとうきびは、まっすぐには育たない。島の強い風や雨に曲げられながらも、
太陽に向かってまっすぐ伸びて行く。
もう9年前になるが、沖縄へいって、各地をウロウロ歩いたときに、
大きく褶曲されながらも、同じ方向に一斉に育つさとうきびをみて驚いたことがある。

そういえば、朝日新聞伊藤千尋さんも、大学生のころ、キューバさとうきび刈り隊に
参加していた経歴があったことを思いだした。
恐らくは、手で刈る、単純で重労働なところが、現代社会との対比にもなるのだろう。

ただ、今見ると、主人公の「派遣社員」という肩書き設定には無理を感じるし、
小児科医の谷原章介は中途半端なDr.コトーのようなものを感じさせる。

しかし、それぞれが、心に何か秘めたものがあるようでいながら、それを深く追わずに
あっさりと描ききったことが、かえって良い結果になったのかもしれない。