花鳥風月記

流れる水に文字を書く

遠藤賢司『満足できるかな』

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酒井俊の「原曲を求めての旅」は続く。
「ミルクティ」の原曲は遠藤賢司の『満足できるかな』の中に収録されていた。
1971年の作品。フォークっぷりが良い。何よりも弾けている。そして潔く短い。
最初の曲「満足できるかな」はかつてみうらじゅんイカ天大島渚というバンドで演っていた
「カリフォルニアの青いバカ」の恐らく原型となったのではないか。
やはりフォーク道はマニアの世界にも通じる。
「カレーライス」では、日常のカレー作りの風景に三島由紀夫の割腹自殺も織り込んでいる。
さて、遠藤賢司はその存在として聴くのは初めてだが、先日聴いたオクノ修とは対照的に
カツゼツの悪さが良かった。実はその悪さが心地いいのだ。
さて「ミルクティ」はアルバムの他曲に比べ女性っぽい歌詞になっている。
作詞は遠藤賢司ではなく「うらたのぶこ」になっている。誰だか分からない。
曲の最初のフレーズは、酒井俊のバージョンでは、ヴァイオリンが綺麗だったが、
原曲はアコースティック・ギター一本の弾き語りだった。

冬の長い陽がいっぱいの坂道で 
あなたとわたしは黙って影をみてたわ
わたしのしてあげた事といったら
たった一杯のミルクティを
飲ませてやった事だけ
もっと優しくしてやればよかったわ
冬の長い陽がいっぱいの坂道で
わたしとあなたは黙って影をみてたわ
ああもっといっぱいのミルクティを
飲ませてあげればよかったわ
だってあなたがそんなに早くそんなに遠くへ行くとは
思わなかったから ふ~ん

この短い歌詞に言葉を重ね、情景を重ね、緻密だが、いろんなイマジネーションが
かきたてられる。ことばの「魔力」だ。

しかし、情感も見事に「四畳半」なところも今となっては良い。
無意味な期待を唄わないのがほんとうに良い。