花鳥風月記

流れる水に文字を書く

米原万里 『米原万里の「愛の法則」』

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1日足らずで読みきった本。もとは講演をまとめたもの。
米原万里については、TVのコメンテーターくらいの認識しかなく、
去年亡くなったことは知ってはいたものの、その著作に触れる機会はなかった。
たまたま今回の新書を読んだ際、その個性の強さ?に驚いた。

生命学から、グローバリゼーション、そして本業の通訳や翻訳のコミュニケーション論に至るまで、
縦横無尽に話している。
特に性に関して、いささか下ネタに近いようなものでも「喝破」していて気持ちが良い。
上記を含めた前半の2章の講演は、高校で行ったものなので、
思い切った性格なんだなあ、と思った。
かつて森岡正博が、『感じない男』(ちくま新書)で、自分も含めた、男の「性」について
「真摯」な分析をしていたが、これは、本人が講演で話すと周りはきっと引くんだろうなあ、と思った。
そこが、男と女の違いなのかもしれない。
俗な言い方をすれば、おばちゃんは怖いものを知らない、といった感じか。

「国際化」「グローバリゼーション」という文脈のなかで、日本がいかに、その時代の大国に
擦り寄って外国の文化を取り入れたか、というところを、独自の視点で分析し、
興味深い内容に仕立てている。これは、幼少期よりチェコという外国で、ロシア語学校という
環境の中で、外国語を学び、日本語を文学全集で深めた、という土台があってのことだと思う。
文化に通暁している人は政治を見る目も鋭い。それを現実のものとして提示しているのが
本書ではないかと思う。

読後感というか「毒後感」はなかなか心地良い。
ただ、池田清彦の「はしがき」は余計だった。