花鳥風月記

流れる水に文字を書く

日本国憲法百景 (9)

「君んち、一軒家?」
かつて、塾で小学生を教えていた頃、子供どうしで、こんな挨拶があった。
勿論、挨拶をしてくる方は、自分の家が一軒家であることを自慢したいというのが本音だろう。
こどもは以外と事実には冷酷なところもあるので、
ある意味、東京ベッドタウンの貧富の縮図なのかもしれない。

土地に関する信仰は変わらない。
「持つもの」「持たざるもの」で最初に意識したのは、中学生のころ、
パール=バックの『大地』を読んだことだった。
思いがけず得たおカネで土地を持つ、ということで財をなす。
家族関係やその歴史にテーマを置いた作品だったと思うが、
なんか堅実なおカネの使い方を考えなければならないなあ、なんてことを思った。
その後、時間が離れるが、漫画『ナニワ金融道』では、バブル経済が破綻しても、
土地神話は復活する、という帝国金融の社長のセリフが印象に強い。

土地の所有は、社会形態や発展によりさまざまな解釈がある。
それがいつしか政治思想にまで発展したのだと思う。
「持たざるもの」としては、「皆に等しく分かち合う」か、「持つもの」の一人になるかの
いずれかを考えることになる。
「持つもの」はきっと「持たざるもの」にならないよう、汲々とするのだろう。

先述のこどもにとっては、生まれの違いは如何ともし難いわけで、
出来ることとしたら、彼の頑張りで、立身出世を目指すしかない。
もっとも、20年も前の話なので、今ではもっとスケール・ダウンしているかもしれない。
「君んち、正社員?」

第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、
国会の議決に基かなければならない。