花鳥風月記

流れる水に文字を書く

日本国憲法百景 (18)

無表情の内側
自宅の団地の近くに、公務員住宅がある。
バスに乗っていると、途中でそこに停まり、公務員と思しき人が乗ってくる。
見た印象で、どの省庁に勤めているか、分からないが、
外国の人や服装が少し派手な人は、それとなく「ここだろう」というのが分かる。
ただ、乗ってくる人全員に共通することがある。
皆、一様に無表情で無口なのである。そして、周りをあまり見ない。
接客を主とする職業ではないから、といえば、そうなのかもしれないが、
何か「浮世離れ」な感じがする。
よく、海外に居住する人たちの間では、厳然とした「身分制度」というか「階級」がある、
と聞いたことがある。それは、日本国内にもおいて「社宅」という空間のなかでも
同じようなことが言えるのだと思う。
会社や組織の中だけではなく、「住」の部分または、家族が憩う空間のなかでも
「序列」が色濃く反映するのは、そのコミュニティも歪な空間になるのだろう。
確かに、そこの団地では納涼祭なども行われたことは記憶にない。
勿論、公務員住宅・社宅とも、市場の相場とは比べものにならないくらい
安い賃貸料で暮らしている。公務員住宅については、都心の一等地でありながら
格安で住んでいることに怒りの声が上がっていたことが記憶に新しい。
ただ、勤める側としては、その恵まれた環境は、「足枷」でもあるのかもしれない。
あるものをどんどん使ってやれ、という意識(時にそれは卑しい心につながる)が、
社会保険庁の年金着服やその他諸々の不正事件になっていくのかもしれない。
あるもの・与えられたものが決まっている人は、それが、貧しくなるものでない限り、
羊のような沈黙を守ると思うが、心の中には、「より豊かになりたい」という気持ち、
いや、「となりのあの人よりも豊かになりたい」という
歪んだ「狼」が潜んでいるのかもしれない。

第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正
     その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、かかる請願をしたためにいかなる
     差別待遇も受けない。