花鳥風月記

流れる水に文字を書く

川上未映子 『わたくし率 イン 歯ー、または世界』

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初の小説集、とのこと。
タイトルにもなった「わたくし率 イン歯ー、または世界」のほか、
短編の「感じる専門家 採用試験」を所収。

奥歯に人間の考える全て、そこには守られるべき「何か」を仕舞い込む、
という妄想?から、さまざまなシーンが展開する。

前作「そら頭は…」でも、イチコロになったフレーズ
「言葉にすれば象もこんなに小さくなるのやよ」(もう、「やよ」にクラクラした)は、
きっと書いてる本人も好きなフレーズなのだろう。

物語の仕掛けは、案外と単純ながら、後半部は、相対する思考が交差する。
「わたくし率…」は、読点(、)で、「感じる…」は中黒(・)で
句点(。)を打たずに、どんどん言葉が迸(ほとばし)ってゆく
返す人の言葉が若干、語りすぎのような気もしたが、
この人の頭の中には、なにが渦巻いているのか、
ますます魅かれていくのを実感する。

HPでは、ライブの映像もあり、坂本弘道氏は、
自分がライブをみた人物と同一であった。

しかし、この(川上)未映子の容姿が今ひとつ分からない。
ライブでは、三十路前の悲哀ある背中を感じた。
この本のおすまし写真とまた印象が違う。
てっきり、「わたくし率…」の主人公とのイメージが最後まで
この写真のイメージを引きずったのが、少し悔しい。くそう。

今度、実物を見てみたいなあ、と思った。