愚短想（７３） EARLY TIMESの思い出
晩酌にありつけない時のために、お酒を買おうと思った。
近所のスーパーでは、なかなか良いのが見つからない。
ので、久々にEARLY TIMESを買った。
大学生になって、初めて買った洋酒がEARLY TIMESだった。
当時、ライ・クーダーのCMがカッコよかった。
初めて自分のお金で買うことに少し興奮を覚えた。
親の酒を盗むように飲むのではなく、正々堂々と飲めることが新鮮だった。
また、引っ越して高層階に移ったこともあって、夕暮れの景色をみながら飲むのが、
ちょっと良かった。
長らく自室の引き出しにしまっておいたが、いつの間にか飲み終わっていた。
不思議なもので、飲み終わりというものは、案外記憶にない。
以来、洋酒は高いものは貰い物が多く、自分からは、贈答用を除いて、
あまり買わなかった。
さて、今回の再会の味は、意外にも辛味というか酸っぱみを感じた。
こんな味だったかなあ、と首を傾げる。
美味しいバーボンは、パンの焼けるような匂いがするものだが、
当時の芳香が感じられない。それだけ自分の嗅覚が世慣れてしまったのか。
いまは、窓の景色よりも、モニターの画像から流れる景色で、飲む。
少し味気ない。
