花鳥風月記

流れる水に文字を書く

ファーストフード・ネイション

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渋谷ユーロスペースのレイトショー。

原作はエリック・シュローサーの本。
以前買いながらも、読みきれなかった。
今回は、著者も共同して、映画の脚本を作った。

ハンバーガーショップを基点とした、アメリ格差社会を描いている。
もはや、昨年の「BABEL」でもそうだが、「格差社会」は
アメリカの代表的な風景となっている。

今回は、ビックワンという商品の中で使われるパテ(ハンバーグ)に
牛糞が混入している、ということを幹部社員が調査することから始まる。
ここに皮肉が込められているが、問題に対する接点は、
各自であるものの、決して絡まない。
上流には上流の、中流には中流の、下流には下流の問題があり、解決できない。
ちなみに中流は、そのバーガーショップでアルバイトする女子学生の家庭。
(但しけっして豊かではないところがポイント)
下流は不法入国でやってきたメキシコ人。

精肉工場では、人間は人間として扱われない。
工場幹部にいいようにされる不法移民の姉妹。
作業の中の怪我も、理由をつけて切り捨てられる現実。
当初拒んだ仕事も、夫の治療費のため、身を捨てて選んだものの、
あてがわれた仕事は、最も過酷な作業。その悲哀を物語る。

バーガーショップのアルバイトに疑問を感じ、
辞めて、「事実」に生きるという「理想」を求めた女子学生も
ことが上手くいかないことに苛立つ。

牛糞混入の事実を掴んだ幹部社員は、最終的には自己保身のため、
その事実を伏せて、仕事に打ち込む。
それがアメリカの現実、ということを描いている。

機械が産業が文明が、人間を駆逐しているのだろうか。